ノベル職人
〜ノベル〜


辻魔通りの田中さん

8:左手の道。

カイ、田中さん、タイチ、辻魔通りに帰還三分前。



……その少年はただ、じっと立っていた。
突き当たりの店。シャッターが降りている。その数メートル手前。
右側に並ぶ、一つのシャッターの前に。
何かに魅入られたかの様に立ち尽くす。
虚ろな彼の眼には、何が写っているのだろうか。
……少しずつ、彼の眼が赤くなっていく。
ジワリと。
既に三十分立っていた彼に現れた、微かな変化。
シャッターから漏れでて、這う様に迫る紅い瘴気。
……彼が、見える筈のないシャッターの奥に見たモノは。
それを見れば、本来正気ならば狂うべき筈なモノ。
だが、まだ幼く、酔っている彼にはそれは理解できるモノではなかった。
だが、彼は誘われるかの様にゆっくりとシャッターに近付く。
シャッターに手を伸ばし、シャッターに触れる瞬間。
手がピタリと止まる。
そして顔を突き当たりのシャッターの方へ。
何か声でもかけられたかの様に、頷き、さっきよりしっかりとした足取りで突き当たりのシャッターへ。
そのままシャッターをすり抜け、消える。
……少年が消えたシャッターからは、何故かしら、幽かに祭り囃子が。
……少年が立ち尽くしていたシャッターからは、瘴気がそのまま液体となった様な、滑らかで艶やかで粘る、それはそれは紅い血が、這う様にゆっくりと流れていった。

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